ミトコンドリアDNAの可能性と限界・4
平均置換速度12000年の意味
orig: 2001/09/28
rev1: 2001/10/12 たけさんの計算

MtDNAのD-ループの塩基は平均12,000年で一つ置換される、という。これに基づいて、あるアイヌ人骨とある琉球人骨から抽出したサンプルでは、塩基が一箇所だけ異なっていた、というデータから、彼らは少なくとも12,000年は互いに分離していたことになる、という結論がある。

12,000年とは「平均」であるのに「少なくとも」と云われていることには疑問がある。たけ(tk)氏が計算したところによると、塩基の違い一箇所の場合の分離年代は5,000年以内である確率が30%、10、000年以内である確率が51%、などなる。

アンデスのサンプルとアイヌのサンプルで二箇所異なっている組があった、という。二箇所の違いに関しては5,000年以内の確率が9%、10,000年以内が21%、20,000年以内が47%などとある。

つまり、塩基の違いの箇所数で遠縁か近縁かを論じるのも飽くまでも可能性、確率の問題なのだ、ということは知っておくべきだろう。

なお、
・「アイヌのサンプルと琉球人のサンプル間で塩基パターンが同一のものは一組もなく、一番近くても塩基の違いが1つあった。」
・「アイヌのサンプルとアンデス人のサンプルの間では2つしかない」
それぞれは、これまでの調査結果(アイヌ51体、琉球人50体)としては事実であろうが、こういう表現の仕方で、アイヌと琉球人の遺伝的距離が遠く、アイヌとアンデスが近い、という印象を与えようとしている文脈に出くわすことがある。要注意だ。

目次
ミトコンドリアDNAは何を教えてくれるか?
はじめにミトコンドリアとは?
D-ループ遺伝に関わらないMtDNAの一部
利点と弱点MtDNAによる系統研究の弱点
何が判ったのか落ち着いて考えよう
12,000年の意味あくまでも平均である
追補:アイヌと琉球人の遺伝的距離触れられない事実
再び、アイヌと琉球人の遺伝的距離12,000年以上離れているは虚
三種類の縄文人?何を意味するのか?
クラスター分類の読み方何を意味するのか?

たけ(tk)氏の「ミトコンドリアDNA研究」の紹介
ミトコンドリア関係リンク

日本語とアイヌ語;それらの縄文語、渡来語、弥生語との関連模式図
アイヌ語と縄文語の関係(人類学の知見)
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