音程の話

rev1: 2002/01/07 倍音表の訂正
rev2: 2002/12/01 簡潔化


碌に弾けないバイオリンだが最近音程に気を遣っている。世の常で、判ってる人には至極当然な話なのだが意外に知らない人が多い。譜面の上で同じ場所にある音でもバイオリン(など)では押さえるべき場所が微妙に違う、という話を理屈で理解しようとする試みである。

1.ハモるとは:

ハモる、つまり、和音が綺麗に聞こえるとはどういうことなのだろうか。そんなのは愚問だ、音程が合っていれば綺麗に聞こえるはずだ、と言ってしまっては身も蓋もない。そりゃぁそうなんだが、それじゃ音程って何だ。

実は和音が綺麗に聞こえるということは二つなら二つの音の周波数が単純な整数倍になっていることなのだ。参照:リサージュ図形

最も単純には、「ある音(基準音、とでも呼ぼう)」と「その音の二倍の周波数の音」、つまりオクターブ関係にある音は良く合う。その二倍の周波数の音の更にオクターブ上は基準音から見れば四倍の周波数を持った四倍音なのである。これも良く合う。

くどく言えば、低いド、真ん中のド、高いド、の周波数比は 1:2:4 となっている。勿論、この先、8、16、32、64、128・・・倍の周波数は ドのオクターブ群ということになる。(なんか、メモリー容量の数字を思い出したり、麻雀の点数計算を思い出したりするだろう。。。)

1.1 最も単純な整数比

1:2がオクターブだとすると、次に単純な 1:3 はどんな関係になるだろう。1をドだとすると、2はオクターブ上のド、そして、3はその完全5度上のソに相当するのだ。

1.2 長三度は4:5

そして、4倍音が又ドで、6倍音は上に見た3倍音のオクターブ上だから、ソとなる。4、と6、に挟まれた5倍音は? ミと呼ぶ音なのである。

長3度であるドとミの関係は上記のように周波数比が 4:5 であることになる。このように倍音に注目して決定する音程がハモる音程なのだ。

1.3 ちょっとまとめ

ここまでの所をちょっとまとめておくと、
自然倍音(純正調)
倍音次音名備考
1
C
基準音
2
C
基準音のCの1オクターブ上
3
G
 
4
C
二倍音のCのオクターブ上=基準音のCの2オクターブ上
5
E
 
6
G
三倍音のGの1オクターブ上
7
?
Bに近い
8
C
基準音のCの3オクターブ上
9
D
 
10
E
 
11
?
Fに近い
12
G
六倍音のGの1オクターブ上
13
?
Gisに近い
14
?
Bに近い
15
?
Hに近い
16
C
基準音のCの4オクターブ上

この純正調、自然倍音系列はトランペットなどでピストンを使わない(あるいは同じピストン位置)で出すことの出来る音の系列ですね。


2.歌う音程とは:

音程については古来興味がもたれたようで、ピタゴラスの音程、というものがある。これは、基準音とその完全5度上の音の周波数比を 2:3 とするものである。基準音をドとして、その周波数を1とすると、ソは3/2(=1.5)となる。この限りでは上記の自然倍音と同じ事ではある。

ソの完全5度上、レが 基準音1の(3/2)倍であるソの更に(3/2)倍、つまり、1.5 x 1.5=2.25 となる。2.25は上の方のレであるから、これをオクターブ下げて見ると、つまり、2で割ると、1.125が基準音としたドの2度上のレに相当する。

レ 2.25 の完全5度上が ラ でその周波数比は 2.25*1.5=3.375 そのラの完全5度上が、今焦点を当てたいミの音である。 3.375 * 1.5 = 5.0625 これを2オクターブ下げる、つまり、4で割る、と 1.265625 という値が得られる。{(3/2)の4乗=81/16、これを4で割る→81/64}

ありゃ、ミとドの比が、自然倍音で得られた1.25とピタゴラスの1.265625とは 1.25%も違うのです。どういうことでしょうか。

別にピタゴラスさんが間違っている訳ではない。実は、歌(メロディ)を演奏するときには、ミの音程を基準音に対して1.25倍ではなく、僅か1.25%ながら高めに、この1.265625倍に取ったほうが気持ちが良いのです。

しかし、他方、和音でド+ミを出すときには、低めに1.25を使わないとハモらないんです。つまり、より単純な整数比である5/4の方が81/64よりもハモる訳です。


2.1 ピタゴラス音程のまとめ

ここでメロディを演奏する時に採用すると気持ちのよい、といわれるピタゴラス音程の定義の計算表を掲げておきます。

ピタゴラスの定義
基準の音をCと置く
次数 音名 周波数比 計算式 同じオクターブへ換算
÷N
1 C 1 (3/2)^0 1.000
2 G 1.5 (3/2)^1 1.500
3 D 2.25 (3/2)^2 1.125
4 A 3.375 (3/2)^3 1.6875
5 E 5.0625 (3/2)^4 1.265625
6 H 7.59375 (3/2)^5 1.8944
7 Fis 11.39063 (3/2)^6 1.4238
8 Cis 17.08594 (3/2)^7 1.06787
9 Gis 25.62891 (3/2)^8 1.6018
10 Dis 38.44336 (3/2)^9 1.201355
11 Ais 57.66504 (3/2)^10 1.8020
12 Eis 86.49756 (3/2)^11 1.3515
13 His 129.7463 (3/2)^12 1.01364

倍音列がどんどん高次になるので、一つのオクターブ内に納めるためには、2,4,8,16,32,64,128などでわり算すればよい。それを追加しました。この列の大きさの順に並べ替えればピタゴラス音程表になるわけです。

すでに煩雑過ぎるかも知れませんので割愛しますが、3/2倍して完全5度上が得られるならば、2/3倍すれば完全5度下が得られる訳です。これにより、Cから、F、B、Es、Asなどを求めることができます。


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参照:リサージュ図形
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