アタゴが何故火産霊と関係するのか |
愛宕神社の祭神は多くの場合、火産霊(ほむすび)または、カグツチ、であり、火除けのご利益を説いている。それはいいとして「アタゴ」という語・音は何なのだろう、と長い間疑問に思っていたのだが、解けた!、かも知れない。 まず、予備知識として、火産霊(ほむすび)とカグツチは同じ神の別名であり、古事記、日本書紀に出てくる。その登場、誕生は甚だ劇的であり、生まれた神が火の神であるから、イザナミはその陰部に火傷を負って死んでしまう。その際、イザナミは苦しさから嘔吐する、その嘔吐物から生まれるのが金山毘古(カナヤマビコ)神と金山毘売(カナヤマビメ)神。糞から生まれるのがハニヤスビコ神(土の神)、尿から生まれるのがミヅハノメ神(水の神)だ、と古事記に書いてある。 さて、上記の嘔吐は古事記では「多具理」と書いてある。「タグリ」と読む。 そして、天香久山(あまノカグヤマ)命、には「手栗彦」という異名がある。「手栗」の読みは定まっていないが「タグリ」がありうる。即ち、天香久山は、イザナミの嘔吐の原因になったカグツチのことか、或いは、嘔吐から生まれたとされる金山毘古、の可能性がある。 一方、嘔吐のことは日本の方言で「オタキ」などがある。村山七郎著『アイヌ語の研究』p66-には、東条操編『全国方言辞典』から、「オタク、オダク、オタキ、エタク」などが静岡、長野、岐阜、茨城、山形、福井県から収集されていることを挙げている。 上記の古事記に現れる「タグリ」と、これら方言語彙「オタク」などと同根ではなかろうか。 そして、山城の「愛宕」郡は「オタキ」と呼ばれていた。その「愛宕」が今は「アタゴ」と読まれるわけだ。かくして、「タグリ」(神代)→「オタキ」(古代)→「アタゴ」のような推移を想定して、なるほど、火傷を負ったイザナミのタグリに因んだのが愛宕神社なのであろうか、と行き着いた。 ところで、上に村山七郎著『アイヌ語の研究』を挙げたが、そこでは、この「オタク」などの日本方言はアイヌ語の atu (吐く)共々、オーストロネシア語、例えばジャワ語の utah (吐くこと)と同系であろう、としている。 |
またまた神奈備HPさんのお世話になりますが、出雲の意多伎神社[おたき]に関し(島根県安来市飯生いなり町679)てです。ここの祭神は「大國魂神 配 大田神 合 日神、荒魂神」だそうです。これは本殿の祭神で、若宮、というの倉稲魂命(うかのみたま)が祀られている。また、この地名とそれに纏わる説話が「稲がなる」ということに因んでいる。ウカノミタマの神格は、イザナミが火傷で亡くなるときに生まれた和久産巣(わくむすび)また、その子だという豊宇気(トヨウケ)ビメ、と共通している。つまり、イザナミがタグリ(嘔吐)で苦しんだ直後に生まれている神々と通じている。 |
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