稲荷・考

orig: 99/05/20
rev1: 2001/12/19 稲荷=とうか

お稲荷さんに祭ってあるのは多くが「保食神(うけもちノかみ)」や「豊受神(とようけノかみ)」と記されています。この2神の名前から何か引出せないか、と思ってます。(狐との関係は、どうやら比較的新しいことらしいし、記紀・風土記には見当たらないので、ここでは触れません)

稲荷とかいて「イナリ」と読むのは常識として、「トウカ」と読む地名があることを知りました。[2001/12/19] これについて後段に書き足します。

まだまだではありますが、最近気が付いたことをメモしておきます。それは、

    ・稲荷信仰が極めて古く、縄文時代にまで遡ることが出来るとすれば、そして
    ・縄文時代の言葉の残照がアイヌ語に求められるとすれば
という2つの大きな仮定の下に成り立つ話です。或は逆に、こうである可能性も高そうだからこの2つの仮定も真らしい、ということにもなり得ます。

アイヌ語日本語備考
uk取る・受け取る・拾う・採取する単数形
uyna取る・受け取る・拾う・採取する複数形
u-ka ta ari重ねる.
u-ka ta anu重ねる.
u-ka-o積み上げるu=互いの ka=上

というアイヌ語があります。

つまり、受け取るという意味のアイヌ語(<縄文語?)に uk と uyna があり、トヨウケイナリ(<ウィナリ?)の接点があるやに見えます。

丹後風土記・残欠の伽佐郡の条に出てきた「笠と書いてウケとも読む」という不思議な記述に関しても、u-ka--- を通せば「カサなる」という概念と「ウケ」と言う音が通じそうです。今まで「笠」という文字に拘っていたのですが「重なる」方の「カサ」かも知れない。

こんなことを考えています。

「ウケ、ウカ」に就いて記紀などから資料を集めたページがあります。


参考:山城風土記逸文・伊奈利社
風土記に曰く、伊奈利と称するのは、秦中家忌寸等の遠祖である伊侶具の秦公は稲梁を積んで裕福であった。そのときに、餅を的とした(矢を放った)ところ、(その餅が)白鳥となって山の峰へ飛んでいった。そこに「伊禰奈利生ひき」(稲が成った)。それで(京都市伏見区の稲荷山西麓にある稲荷神社)社名とした。

つまり、「イナリ」は「稲成り」である、とする語源説話。


[2001/12/19追記]

稲荷と書いて「タウカ」「トウカ」と読む地名がいくつもあることを知りました。多少のダブりはあるかもしれないけれど36地名見つかりました。稲荷=トウカ、リスト

なんのことはない、「トヨウケ」とか「トヨウカ」が「トウカ」に訛ったのではないでしょうか? そして、「トウ」「カ」、にそれぞれ「稲」と「荷」を宛てた,と考えるのでしょうか。

或いは、トヨウケが toy or uk (畑で・受け取る)に対して to uk が湖沼で・受け取る、という対比を見るのがよいのでしょうか。

稲荷を何故イナリと読むか。
訓読み:イナ・ニ。
音読み:トウ・カ。
トウカはトヨウケ・トヨウカからの訛であり
受けるの複数(繰り返し)がウイナであり
(「リ」が不明)・・・

こんなあたりに収斂してこないでしょうか。


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