アイヌにおける「鳥」に就いて
資料
orig: 2000/11/01
橿原市の四条遺跡で6世紀前半頃の古墳の堀から鳥形の木製品が出土したそうですね。以前から「鳥」に関してまとめたいと思っていたのであちこちのメモから取りあえず集積しておきます。

鳥と船 はこちら


●アイヌ語の「鳥」と類似音の語彙:
chir; chikaptoriとも言うが、縄文語起源の同根?まぁ日本語からの借用語だろう。さしたる根拠もないが。
chip「鳥+船」のモチーフもアイヌ語だと chir-chip となり語感がヨロシイ。「秩父」?
chiw潮、流れ 
chup太陽、月(空を)流れて行くもの、つまり chiw-pという原義の解釈もある
chuk日本語「秋(トキ)」との関係? chuk-ipe 秋の・鮭:トキ鮭
chikap rup鳥の群れ大年神の配偶者「天知迦流美豆比賣」はこれか?
chikap say鳥の群れ 
chikir(動物の)足 
chikuni木、樹木、立木、薪 
chirirしたたり落ちる 
chire湯がく、ゆでる、煮る 
chik chikしたたり落ちる伊豆・杉鉾別命神社のいわれ

●「鳥」に関して「渡り鳥が伝染病(疱瘡)を媒介する」という考えがある。そこで、鳥の異名として、歩く神(apkas kamuy; arpa kamuy)、歳を持つ神(pakor kamuy)、大きな姿の付いた神(si kat or kamuy)(知里真志保・人間編P354では「糞形のついた魔神」とする)など多数がある。歳を持つ神と大年神を別途あげてある。

●余談めくが、知里真志保、の「知里」も鳥の意味であろう。沙流の人が疱瘡神に対して「我らも鳥の子孫なのだから病気にしないで呉れ」と祈るそうだ。

●日本古代:鳥の付く名前(+α):
木花知流比賣知流=chir ?出雲系譜
鳥耳神chir kisara出雲系譜・大国主夫人
鳥鳴海神 出雲系譜・大国主と鳥耳神の子
日名照額田毘道男伊許知迩神「照」=鳥?出雲系譜・鳥鳴海神夫人
布忍富鳥鳴海神 出雲系譜
武夷鳥上の「日名照」と同じ??出雲神官系譜・穂日の子
櫛甕鳥海 出雲神官系譜・第6代
知里chir=鳥出雲神官系譜・第8代
海部直鳥天のヒタ鳥・天夷鳥・日名照肥前風土記
天御鳥命古事記の「建比良鳥」と古語拾遺の「彦狭命」に相当するらし出雲風土記・「知」字は chir?
知迦流美豆比賣 古事記出雲系譜・大年神夫人
大年神pa=年・歳・疱瘡:鳥が伝染源古事記出雲系譜
速都鳥命 国造本紀#110穴門国造
鳥屋神社 出雲風土記・斐川村伊波野の鳥屋にある
船底(神社)chip so船床→chir set 鳥・巣(鳥栖)?肥前風土記
説話類
天若ヒコに鳥が伝達鳥を殺すので彼も殺される記紀
天若ヒコ葬儀に鳥が活躍鳥葬の残痕??ニギハヤヒにも同様の伝承[先代旧事本紀]
垂仁皇子ホムツワケの話鳥を見て喋るようになった。鳥取部のことおものき考
伊勢津彦は天夷鳥の子、出雲建子、櫛玉命武蔵国造伊勢の語源
イザナギ・イザナミ国生みの時その方法が判らなかい。「セキレイ」(鳥)の動きを見て、その方法を覚った同様の話がアイヌにもある日本の民話#3神々の物語、瀬川拓男ほか、角川文庫、p20
宇武加比比賣命、神魂命の子、法吉鳥と化る 出雲風土記・嶋根郡
賀夜奈流美(かやなるみ)命の御魂を飛鳥の神なびに坐せて鳥鳴海との関係は?turi=船の棹:櫂=カヤ?出雲国造神賀詞・参考カヤナルミ

●chir と chip が混乱した(らしい)話:出雲風土記の地名よりコピー:

鳥上山=船通山

仁多郡に居る内に触れて置かねばならないのが「鳥上山」でしょう。今、「船通山」と称していますが、全く関連の無い改称或いは別称があったのでしょうか。それぞれ「山」以外の部分を、アイヌ語に直してみると、 「鳥上」が、chir-kasi、「船・通る」が、 chip-kus となり、chir と chip、kasi と kus は通じてしまったのでは、ないでしょうか。 (「鳥船」=chir chip →秩父、も興味のある作業仮説です。)

●鳥のいない国=chikap sak mosir(まぁ、日本語で地獄みたいな所)


Homepage & 談話室への御案内
アイヌの大国主
出雲系譜
アイヌ語参考文献
言語館の目次へ
目次へ
メールのご案内へ