「やつかみみ」を考える
ORIG: 2009/11/25

出雲国風土記に述べられる出雲の国引き物語は良く知られているが、その主人公の名は余りポピュラーではなさそうだ。
「八束 水 臣 津野命」とある。これは:
ヤツカミヅオミツノみこと」と読む。

古事記にある出雲神の系譜、スサノヲの系譜(4代目)に「淤美豆神」(オミヅ{の}かみ)があり(参考:スサノヲ系譜)、同一人物であろうと考えられている。

世代としての位置(順番)には疑問もあるが、国引きをした「八束水臣津野命」が大国主の祖父にあたる、という伝承は、ありそうなことだ、とは容易に察せられる。

さて、スサノヲが娶ったクシナダ姫、その親は手名椎・足名椎だが、別名として:
「稲田宮主簀狭之八箇耳」(書紀)、「稲田宮主須賀之八耳神」(古事記)がある。「八箇耳」の部分は「ヤツカミミ」と読めよう。(通例では「ヤツミミ」と読むようだが「箇」は「カ」を読むのが通例であり、従ってここは「ヤツカミミ」または「ヤカミミ」と読むべきであろう。)

すなわち「八束水臣津野命」と「・・・八箇耳」には共通要素が入っている。

「水臣」の部分はとりあえず「ミヅオミ」であろうが二重母音を嫌った古語の性格を考えると「ミヅミ」かもしれないが、「ミミ」に相当すると考える。

さらに、大国主が白兎を助けて「八上姫」に夜這いに行くという出雲伝承がある(古事記)この姫の名は普通「ヤガミ姫」と読まれるが、「ヤツカミ」との読みも可能であるのみならず整合性が高い。

上記「クシナダ姫」の親に関しては父親が脚摩手摩(あしなづてなづ)であり母親が「稲田宮主簀狭之八箇耳」である、という異説もある(書紀第2の一書)。さすれば、この母親が「八上姫」である可能性が見えてくる。 まとめておくと:
八束水臣 ヤツカミ(ヅオ)ミ
八箇耳  ヤツカミミ
八上   ヤツカミ
(八墓) ヤツカ

妄想:ヤツカミ(八上)姫と脚摩手摩(婚姻により八箇耳・ヤツカミミと称す)の娘がクシナダ姫。スサノヲとクシナダの子が八束水臣・ヤツカミミ{Jr.}(国引き主人公・大国主職){母系名称相承)

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