縄文語?のお遊び
ORIG: 97/02/06
REV1: 97/09/11 font, style, href
REV2: 98/07/25 table

朝日新聞の広告特集で三内丸山遺跡に就いて、ちょいちょい上がっていますが、今日(97/02/06)は「縄文人のことば」(崎山 理 監修)が出てます。勿論、当時の「文献証拠」があるわけではなく、ある根拠によって推定されたものです。日本列島に行われた言語の原始状態に就いて、南北両方からの影響を受けて、日本古語が出来上がって来たのであろう、との考えに基づいた「知的なお遊び」と受け取ります。

面白いので少し遊んでみました。つまり、この縄文語を想像・創造した人たち(つまり崎山さん達)が、何をベースに考え出したのだろうか、の解読です。


・「教授」が黒板に書いている言葉:
・北からきたコトバ:

ダマ
damban
ははぁ、確かにモンゴル語の daba=山を越す、などから*daban=山、との再構推定形があるようですね。他にも dorben=よる(夜)から モンゴルの d が日本語の y に対応するらしいとは、よく読みます。なお、現代モンゴル語は uul

ダトウ
detu
上記から行くと日本語の「ヤチ、谷地、ヤツ」辺りを意識しての案かな、と思いました。現代モンゴル語は 川=gol

ジュキ
juki
現モンゴル語は chas らしい。アイヌ語は upas。根拠不明。
・南からきたコトバ:

アマ
kama
村山さんはオーストロネシア語の推定形を *langit としてる。kama の根拠不明。アイヌ語では、nis とか kanto.

ワタ
wasa
確かに日本語は古くは、t/ts/s が混乱しているので wasa なら「ワタ」になるが。。。 日韓祖語推定再構形 *pata を使わなかったのは何故だろう。。。マレー語なら laut、 アイヌ語なら atuy

グル
guru
ウーム、アイヌ語 kur(人・影・nis-kurで雲)もこれかぁ。

・老人と若者の会話:
原典(新聞に出ていた通り)
解釈(小生が語と語の対応を想定したもの)
所見(小生のコメント)

原典: ア・バ ナァ・ガ キタカタ(私はキタカタと言います)
解釈: 私 の 名  は(です)
所見: 一人称単数を「ア」とするのは「吾、あ」からもアイヌ語からも首肯出来る。バが所有を表す助辞ということらしい。人称代名詞は変化せず助辞で表したと言うのは、日本語とも共通する。オーストロネシアではどうなんだろう。

ナァ(名)はオーストロネシア再構推定形 *agan (<タガログ語の ngalan など)が 根拠だろう。村山さんは、アイヌ語の re(名) も同系と考えて居られる。

原典:アヌ、ナ・バ ワタ・ドゥ ムドゥ・リ?(いつ、あなたは海から戻りますか)
解釈:何時 貴方は 海  から もどる か?
所見:アヌ が何時、に対応するのだろう。アイヌ語 nehi の n音が対応するとでも? ne はアイヌ語では nep(何物)、ne あの、この、〜になる、などかなり重要な語素である。

マレー語 apa-bila の apa 何、辺りとの関連だろうか。 バが前例では所有の助辞に見えたが、ここでは主格かぁ。

ムドゥ=戻る、、、何か根拠があるんだろうが判らない。

原典:クパシ・キ トゥマ・ニ マ・ミ・イェ・ブ・ル トゥクィ (美しい   相手  と 出会うとき)
解釈:妙し  き body に   まみえる???    とき???
所見:クパシは、日本古語、妙し(くはし)から作ったのだろうか。キは活用語尾? トゥマは「妻」の語源か?  アイヌ語の tumam (胴・体、幹、壁;性交する)辺りともつながりそう。

マレー語では、tuma は、シラミ(噛まれると痒いヤツ)

マ・ミ・イェ・ブ・ル。これは難しい。まみえる、と近すぎる。。。
目・見・お前・?・? アイヌ語 e= お前(ニ人称単数)
トゥクィ、時、トキ、とは、だいぶ新しい語感があるが。。。根拠不明。

原典:ア・バ ムドゥ・ラ・ム(私は戻るでしょう)
解釈:私・は 戻る  でしょう
所見:むどぅらむ、戻らむ、なんて奈良・平安頃の新しい(^_^)語感がしますね。。。アイヌ語 ramu=思う、考える、(これの語源は ram 心、だろう)も参照。

なお、新聞に出ている範囲では、「ト to」がなく全て「トゥ tu、ドゥ du」と なっており、これは、後代(奈良朝)の乙類を想定しているように窺えて面白い。 なお、甲類のトはなかった、との大野説を採用しているようにも見えます。 参考:倭トトビモモソ姫

引用:「崎山教授の学説によれば、縄文人のコトバは北方と南方から伝わった言語が 混合して形づくられ・・・・」

お遊び、ですが、結構、マジに調べ回りました。。。(^_^)

「縄文語、を考える」もご覧下さい。


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